『愛猫トラは、マッサージで御礼をしなかったが、、、。』
「ネコにマッサージする」という考えを、これまでだれもおもいつかなかったのは不思議なことです。と言う書き出しで、この本の第1章は始まります。
私は、愛猫トラとマッサージをする関係を持っていました。1960年代なかば頃から1970年代なかば頃までの話です。
トラは、黒トラの雌の日本猫でした。なかなか優雅な雰囲気のある猫でした。雌ですが子供を産んで、私たち人間の家族に見せてくれた事は有りません。第一、近所には、トラに釣り合うような優れた雄猫はいませんでした。何匹かが言い寄った様ですが、トラは相手にしませんでした。私は、トラに言い寄って我が家を訪れた貧相な雄猫が、トラに撃退される様子を何度か目撃しました。
その代わりでしょうか、トラは養子を育てました。既に我が家にはトラがいるのにもかかわらず、弟は、学校の近くの空き地から生後しばらくした眼の開いた子猫を拾ってきました。トラに引き合わされた子猫は、精一杯、虚勢を張って見せるのですが、トラは取り合いません。たしなめる様に子猫を舐め始めたのです。優しく「怖がらなくてもイイよ」と言っているかのようでした。子猫はトラの養子になりました。お乳こそ出ませんが、私どもが与える牛乳を子猫が飲む様子を見守り、子猫が休む時は抱いて寝たのです。トラの尻尾で子猫を遊ばせる事もして、本当の親子のようでした。
そんなトラたちと、夕食後に離れの一間で過ごすのが、私の日課の一つでしたが、その時にトラたちの身体を撫でたり擦ったりするのが私の就寝前の一仕事でした。仕事と言うよりトラたちとのコミュニケーションでした。
撫でたり擦ったりと書きましたが、強弱を付けてマッサージです。トラは賢い猫で、やっている私の手を自分の手で(その使い方からして前足とは言いかねるのです)引き寄せたりして、求めるところに案内するのです。最後には自分の口元に私の手を引き寄せて、私の手を舐め始めるのです。有り難うと言う訳です。愛猫トラは、マッサージで御礼はしませんでしたが、様々な思いやりを私に示してくれました。それらは、また別のお話です。
この本は、トラたちと過ごした心温かい時代を思い出させてくれました。あの時代に、このような本が在れば、老境に入り始めたトラにもっと上手にマッサージをしてあげられたと思われてなりません。ただただ、私が若くて未熟だったとしか言い様がありません。
オススメです。